そうだ、何といっても年末年始を無事に過ごすためには軍資金が必要だ。
将来的な 事ではない、まずは目先の幸せを求めなくて何が人生だ。
君は『天使』に向き合うと 迷うこと無く言った。 「金が欲しい、年末を豊かに暮らせるほどで構わない」
「具体的にはお幾ら必要ですか?」 メモをとりつつ『天使』は聞いている。
君はそれほど強欲な人間ではないし、生活 スタイルは極めてシンプルだから願う額は比較的つつましいものだった。
「5000円、いや1万円あれば十分かな」
「こういう願い事をするときは1億とか100億とか、途方もない金額を請求するもので
すけど」
「年末を過ごすだけなのにそんな金は必要無いだろう」
君の願い事に何故か『天使』は不満そうだった、そして何やらぶつぶつと呟くと近
くを歩いていた畠山青年(仮名)に突然襲いかかると隠し持っていた金属バットで何
度も殴打した。
ぐったりとなって動かなくなった畠山青年(仮名)の懐から財布を抜
き取ると思わず舌打ちする。
「…ちっ、1000円しか持っていねーよ。あと9000円か、おらおらおらァ!」
たちまち蜘蛛の子を散らすように人々が逃げ回る。
辺りには悲鳴と共に『天使』の 狂った様な叫び声が轟き、君の手には血塗られた1000円札が握られていた。