君の言葉に『悪魔』はいたく感激したようだ、悪魔の分際で手を胸の前に組み祈り
など捧げているではないか、ひょっとすると悪魔ではないのかもしれないが。
「ああ!」
胸を詰まらせる悪魔、こころなしか瞳が輝いている。
「あなたのような人間が現われるのを待っていました。
あなたほどの清らかな魂の持 ち主ならば我らが主人も満足していただけるでしょう!」
「何なんだ、その主人ってのは。
やっぱり願い事と引き替えに魂を頂くって奴か」君の言葉に『悪魔』はひどく驚いたようだ、しかしひるまずに君の瞳を見る。
「魂の全てを求めているのではありません、魂を形作る精気を少しばかり頂きたいの
です。
何の見返りもなしに願い事を叶えると偽って世に混沌と恐怖を与えるよりはま
っとうな契約だとは思いませんか? 簡単な疲労感が一週間ほど続くだけですからっ」
意外な申出に君は困惑した。
確かにギブアンドテイクという精神は悪くない、願い 事を叶えて貰うならば代償を払うのは当然のことだ。