[気にするな]

 完全な善人でもない君はそう答えた。同情とか一時の気の迷いとかそういうレベル で拾ったので、正義感とかそういう代物はかけらも有してはいないのだから。
「いいえ、それでも行動に移してくれたのはご主人様が最初です」 「だ、誰がご主人様だって」  これではアブナイ物語の展開ではないか。
君は己の動揺を悟られぬよう細心の注意 を払いつつも、疑問を思いきってぶつけてみることにした。
「で、お前は何者なんだ」 「見ての通りの悪魔ですが、精気を代償に何か願い事を叶えさせていただいておりま す。命を失うほどではありませんが、軽い疲労感はありますけど…」  ありきたりのマニュアルらしい冊子を読み上げつつ『悪魔』は君の質問に答える。
なるほど、こいつは街頭営業を命じられていたようだが、君が最初に声をかけたとな ると営業成績はどん底なのだろう。この不景気では悪魔の世界もリストラやら何やら で大変なのだろう、さしずめこいつは最有力候補かと君は涙を禁じ得ない。

・よし、何か叶えて貰おうか
・別に叶えて貰うことはない