[ああ、心が寂しい]
 
侘しい。
正月を共に過ごすべき友も恋人もいないのだ、かといって大学に顔を出し ても空しさは増すばかり。
どうせ寂しいのだから徹底しよう、家から一歩も出ずに送 る正月もまた良いものだと一人納得して君は家に帰ろうとした。

「ちょっと、そこの心の貧しいお兄さん。愛はいりませんか?」

この御時勢に随分と物騒な話をするものだと思いつつ君は声に反応した、鈴を鳴らす ような少女の声でなければ顔面に拳を叩き込んだところだろうが。
振り返ればピンク ハウスに身を包んだ『天使』が立っていた、歳は二十を過ぎているだろうがお世辞に も似合うとは思えない。
見てくれは悪くはないだけに、いかにも作り物の翼と蛍光灯 製の天使の輪が浮き立つことこの上無く、何か致命的なものになっている。

・仕方が無い、救急車を呼んであげよう
・このクソ忙しい時に貴様なんぞに関わっている暇なんぞないわい!